書評 ファスト&スロー ダニエルカーネマン 意思はどう決まるのか

コーチング

こんにちは

普段しっかり考えて行動している
そういう人にこそ読んでもらいたい、
人間は合理的な判断だけでできているわけじゃない
という本を紹介します。

それがダニエルカーネマンの”ファスト&スロー”
副題は、あなたの意思はどのように決まるか。

2014年のハヤカワノンフィクション文庫なので、
元本はもうちょっと前に出てるかもしれません。

経済学というのは、合理的な判断
例えば一番安いものを皆が求めて買って、
需要と供給で値段が決まるといった、
合理的な判断で経済が動くというものですが、

著者のダニエルカーネマンは、人間はそんな合理的じゃない
ということを前提に考え、
行動経済学という分野を確立して
ノーベル経済学賞をとっています。
当時は経済学の学位を持ってない、
心理学の教授。異色の受賞者です。

ちなみに経済学賞は
ノーベル財団が作ったものではないです。
こっちのツッコミもまたいつか話題にしたいですね。

で、この本。帯には
東大で一番読まれた本とありますが、
おそらく日本で一番合理的に行動できる人たちの間で
この本がよく読まれたということは、
合理的と思っていてもそうじゃなかったという
実感があったからかもしれませんね。


この本を読んでより合理的に行動できるようになりたい
という矛盾した動機にならなければいいのですが。

上下巻あってかなりボリュームがあるのですが、
私は下巻も持っているのに上巻しか読んでない。
上巻だけでおなか一杯になるくらい付箋だらけです。
なので書評は上巻だけです。すみません。

内容ですが、前述の通り
如何に人間が合理的な判断ができていないか
が書かれて上下巻で、38章。

親切なことに章末にまとめが書かれています。
このまとめは、「何々(章の主題)を話題にするときは」
で始まり、会話形式で、落語の小話みたい。

これはいらないという書評はよく目にしますが、
私はこれだけ読んでも面白くて、いい例なので
とても親切。忙しい方は章末だけ読んでも
いいくらいです。

 

で、本編の始まりは人の思考は2種類あって、
直感的な早い思考(システム1)と
論理的に考える遅い思考(システム2)に
分けられるとのこと。

人はめんどくさいことを嫌うので、
大抵は直感に引っ張られて論理的な思考をしないもの
という話が展開されます。

掛け算で、一桁ならいわゆる九九で
考えなくても答えが出るのがシステム1、
3桁なら手書きや計算機が必要というのがシステム2
としています。

掛け算はかなり簡単な例ですが、
普段の意思決定でも、考えるべきところで
昔の記憶を頼りに早く答えが判ったつもりになって
行動してしまうことがほとんど。

このことはヒューリスティックといって、本文には
「困難な質問に対して適切ではあるが
往々にして不完全な答えを導くための単純な手続き」
と書かれてます。
要するに、

「人は多くの問題に、
拙速に答えを出してしまい、
そうした考えは大抵は間違ってる」

ということを表した言葉になります。

この考えは行動経済学の根幹で、
“ヤバイ経済学”とか、”予想通りに不合理”、
ブラックスワン、
最近では、”ファクトフルネス”といった本でも書かれている
直感と事実は往々にして異なることが多いので
気をつけろ、という思想となっています。

以前紹介した”たまたま”にも通じる、
いろいろな本の元ネタになっています。

W書評 新訳原因と結果の法則とムロディナウのたまたま。偶然って何?
ラッキーに関連した、偶然は存在するか、 という問いについて、 ある2冊の本を比較すると面白かったので共有します。 1冊は、原因と結果の法則、もう一冊は、たまたま。 原因と結果の法則 原因と結果の法則は、原題は As a man...

 

書きたい内容はいっぱいあるのですが、
2つほど例を紹介します。

少数の法則ってご存知でしょうか?
統計学のポアソンの極限定理の話ではなく
カーネマンの心理学的な解釈の話です。

統計の話なのですが、
何度も繰り返せばいわゆる一定の確率に落ち着く
ということはよく知られています。

サイコロを振って例えば1が出る確率は1/6ですが、
これは何回もサイコロを振れば6回に一回は1が出るという話で、
大数の法則です。
じゃあ、実際6回やらないと1が出ないかというと
そんなことはない。ただし、100回やっても出ないこともある。
これは、次にサイコロ振って1が出るかという期待値の話です。

何が言いたいかというと、
試行した数が少ないうちは、
その経験や数値はあてにならないということです。
これがカーネマンの言う少数の法則です。

サイコロでさえ最低14回はサイコロ振らないと
確率は1/6にならない。

そういったあてにならない経験や数字を頼りに
早い判断をすると大抵は失敗するという話です。

ご参考
数学: さいころをその全ての目が出るまで振り続けるとき、振る回数の期待値

サンプルサイズが小さい方が、より極端な値をとる確率が高い

 

もう一つの例は
説得力のある文書を書くには

これはシステム1を利用した、
早い判断を誘うテクニックの話です。

まずは文字のコントラスト。
要するにフォントを太字にしたり
明るい赤や青、アンダーラインでもいいでしょう。
結構ブログでも見ますよね。
あれは強調することもありますが、
説得力を増す効果があったんですね。

ヒトラーは1892年生まれです。

ヒトラーは1885年生まれです。

この文のどちらが説得力があるか?
何故か、太字の方が正しく見えてくる。
どっちも間違いなんですが。

また、文を短く、韻を踏ませた格言的な文書の方が
洞察に富むつまり、説得力が増すそうです。
以下がその例。

告白した過ちは半ば正されている。

過ちを自ら認めたときには、
その過ちの半分は正されたと言ってよい。

文書書くときには簡潔にと勧められる理由は
こんな影響もあるということですね。

もちろん文書自体が
明らかに間違ってたり、支離滅裂なら、
コントラストや韻文は通じない
とは注釈がありますが。

本文の中の言葉で締めたいと思いますが、
人は誰でもほとんどの場合システム1の
印象に導かれて生活しており、
その印象が
どこから来るのか知らないことが多い、
とのことです。

じゃあどうすればいいかと言えば
面倒くさがらずに事実をベースに考えなさい
ということですかね。

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