書評 文系と理系はなぜ分かれたのか 隠岐さや香 世界のトレンドと日本

書評・番組紹介

こんにちは

今回はタイトルに惹かれてつい手に取ってしまった本、

文系と理系は何故分かれたのか 隠岐さや香著

この本は別の本を探していた時に
見つけたもの。タイトルって大事ですね。

書店で買ったときにはカバーかけてもらったので
意識したつもりはなかったのですが、
東大で月間売れたランキング1位と
またもやファスト&スローと同じく東大書籍部1位。
インパクトあるんですね。

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2018年出版と、この本紹介では新しめ。
でもこういう本はあまり見たことがなく、
内容もあまり知られてない
文系の学問の成り立ちとかも書かれてて、興味津々。
時間かからず読み終わりました。

肝心な内容。

一般に言われているのは、

日本は文系、理系が分かれすぎ。
若いころはもっと広く世界を見なくちゃ
ということ。

これが 実は世界でもそんなもんだよ、
というところから始まります。

欧米でもここ数十年ほどは、学問の分野を2つに分けて
論じることが増えていて、少なくとも学問としては
以下で認識されていて、この分裂が行き過ぎではないか
ということは議論になるらしいです。

文系=人文系はHSS(Humanities and Social Science)
理系=理工医はSTEM(Science, Technology and Medicine)

この区別がどうやってできたのか、
この分類が社会にどうかかわっているのか、
最近境目がハッキリしない分野も出てきて
その問題点に関して書かれています。

ごく簡単に説明すれば、
誰もが納得できる形で認識できるのが理系の学問、
一般論で語るには難しいのが文系の学問

文、理分かれるのは当然で、
わかりやすく、儲けになる理系に流れているのが
今の世の中。
これが大筋と捉えました。

内容は読んでもらうとして、
この本で、私が取り上げたいものが2つ。
日本の産業の状況と、男女差についてですかね。
言い換えると
世界の流れに乗っていないモノ2つ
とも言えます。

そもそも、日本で使われている科学という言葉。
Scienceの訳語なのですが、
これは中国で、その他の学問という意味の言葉。

その他というのは、当時輸入していた
法律とか漢詩とかじゃない、
実際に役に立つか判らない学問
という感じで使われていたらしい。

欧米ではScienceは本来の語源は、
知識から転じて学問全般という認識。
自然科学だけを示すだけではないということですね。

このただの言葉の認識のずれが、
人文系で世界で活躍する日本人が多くない原因かも、
とも言ってます。

世界でも一般的に理系は儲かる実業という認識で、
所得レベルも、理系の大学卒業者は、人文系の卒業者と比較すると
MBA取得者など一部を除いて高いと言われています。

面白いのが、自然科学の中でも
一番儲かるとされる工業に関して、
総合大学で工学部を世界で初めて設置したのが、
東京帝国大学とのこと。

ヨーロッパの知識層の中では、工学は職人任せで
学問体系ではそれほど重きを置かれていなかったことを
表わしてますし、
それに対して、
明治期の日本は富国強兵、
ヨーロッパに追いつくべく、
産業の活性化に知力の多くを費やしていたことの現われでもあります。

このせいか、日本は今でも予算配分など
理系偏重の傾向があるとのこと。
日本の自然科学の研究はこれでも恵まれている
ということです。

更に、
大学とその元の政府が産業界と密接につながることで、
技術のニーズを的確にとらえて、
もっといい製品を作るという、
いいサイクルを回していたのですが、
今となっては産官学の癒着の構造と批判されています。

批判と言えば、80年代に日本の工業製品が
世界を席巻していましたが、
今ほど世界レベルではなかった基礎研究が
やり玉に挙がって、ただ乗りと揶揄されて、
圧力もかなりかかったとのことです。

時代は進んで、
欧米を中心とした世界の流れは
大学が自分の興味だけ研究し
技術はどうぞ産業界でご自由に、というのでは
お金儲けができない、と反省した結果、

日本を研究し、
産官学連携して、”学問でお金儲け”を実現。
今のGAFAのような超優良企業のもとになってます。

逆に研究された日本はどうかというと、
基礎研究への回帰という意味では、
こちらに予算を増やして世界レベルを
リードするようになりましたが、

産官学を離すことに執心し、
大きなアドバンテージだった技術系予算も削れ、といった、
世界の流れと全く逆方向に舵を取っていて
この先どうなるやら。ちょっと不安です。

もう一つの話題は性差について。

著者が女性という訳ではないのでしょうけど、
理系に女性の割合が少ない問題についても
ページを割いています。

理系の世界では未だ、女性軽視が続いているとのこと。
いい例がノーベル賞。100年以上の歴史があるのに
化学賞とか物理学賞では
確か2,3人くらいしか取れてないですよね。

工学部卒業者は他国では、2割から多ければ
4割となってますが、日本では1割程度。
文系でも経済などの社会科学の卒業生は
女性が4割と体力差は関係ないのに、
日本は諸外国と比べて低い。

客観的に諸外国と比べて、日本では
女性の、儲かる学問への進路が
世界の中でも、とりわけ取りにくい
状況とのことです。

女性が理系に向いていないというのは
それまでの習慣や文化がもとになった精神的なもので、
儲かる職業のもとにある理系への進出ができていない
と訴えています。

最近は脳科学の研究も進んでいて、
男性女性で、素質とその進路の違いが論じられますが、
それと現代の一般的な職業は別で
訓練でどうにかなるものがほとんど。
脳の機能とは関係ないとしています。

私の経験からも研究してて
男女差はあまり感じたことはないですね。
たまに工場に入って作業もしましたが、
現場レベルから見れば
私も女性も力仕事は任せられず。
扱われる男女の大差はなしでした。

女性の管理職が少ない問題と根は同じ話。
なので、社会全体の子供の育て方の問題
と結論しています。

女性の社会進出に関しては、
産官学分離の日本の逆行とは違って、
世界のトレンドには乗っているようなので、
文化も超えて”自由”に進路が選べる世の中
に進んでいくものと思われます。

感情的でコミュニケーション能力が高いのが女性
論理的でコツコツ組み上げる能力が高いのが男性
ステレオタイプな捉え方で、
私の感想では確かにそう思うことも多いですが、。
スポーツで男性が女性より有利という程の
違いではないと思います。

投資の世界では、世界のトレンドに最後に乗る
つまり最後に損をするのが日本、
といわれていますが、これとは逆に、
時代の要求でもありましたが、
はからずも産業では世界のトレンドの最先端を行っていた日本。

乗り遅れているのか、リードするのか、
どう進んでいくのか楽しみです。
そんな読後の感想でした。

何を根拠に何を批判するのか、
考えさせられる本です。
日本という社会のビリーフシステムを引きずっていては
決して世界のトレンドにはついていけないですね。

トレンドと逆行していることが吉と出るか凶と出るか、
一か八か、
どうせならとことん逆行して突き抜けるというのもありでしょうね。

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